認知症の父の在宅介護記録

アルツハイマー型認知症(要介護5)を患う父の在宅介護の記録

退院に向けて(痰の吸引について学ぶ)

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季節はそろそろ初夏に
普段、痰なんてさほど気にしたことがなかったものの、誤嚥性肺炎をわずらう患者にとって痰は大敵。特に父の場合、入院当初、咳すらできなかったので痰が出ても自分で吐き出すことができなかった。そうなると、ドンドン痰が気管支に貯まって痰づまりを起こしたり(最悪の場合は窒息死してしまう)、痰が肺に行き炎症を起こしたりしてしまう。健康な私たちにとってはぺっと吐き出せばいいだけの痰も、体力の無い老人にとっては命取りになる危険性もある、厄介ものなのだ。
 
なので、痰がたくさん出ているときは、吸引してあげないといけないわけだが、鼻もしくは口から気管にカテーテルを入れるという、考えるだけでも嘔吐反射しそうな行為。看護師の場合は、仕事とわりきってできるけれども、素人が身内に対して行う場合、かなり気持ち的にしんどいものがある。。。なので、痰の吸引練習が一番、気が重かった。
 
痰の吸引の手順はこんな感じ。
 
1.口腔ケア
(口の中が潤って、カテーテルを挿入しやすくなる)
2.手袋をする
3.カテーテルを取り出す
(病院では毎回新しいカテーテルを使用、自宅では1日に1回新しいものに交換)
4.吸引器にカテーテルをつなぐ
5.電源ON→水を吸って吸引できるか確認する
6.鼻または口からカテーテルを挿入し、痰を吸引する
(吸引時間は長くても15秒程。長時間吸引は酸欠を引き起こすことも)
7.吸引後は水を吸って、チューブの中をクリアにする
8.電源OFF
 
父の場合、片方の鼻に経鼻栄養のチューブが入っており、もう片方の鼻はチューブが通りにくかったため、痰の吸引は口から行っていた。
 
入院当初の父は本当に体力が無く、痰の吸引時も無抵抗な状態だったものの、栄養状態が良くなり体力がついてきてからは、不快な吸引に抵抗するようになってきた。カテーテルを入れると、舌でカテーテルを押し出そうとする。そのため、喉の中になかなか入らず、こちらも苦戦してしまった。コツとしては、カテーテルを舌に触れないように、上向きに入れ、弧を描くように喉もとに入れること。そうするとすっと入っていき、気管の方までスルスルと入っていく。
 
痰をひく上でのポイント、注意点はこんな感じ。
・痰がなかなか引けない時は、枕を外し、頭をフラットな状態にすると良い
・あまりガンガン挿入すると、粘膜を傷つける可能性があるので要注意
・SPO2(血中の酸素量)が90台前半以下になった場合はいったん止め、時間をあけて再度吸引。
・痰の色(白や透明はOK、緑がかったものは肺で炎症を起こしている可能性有)や粘り気をチェックし、健康状態の参考に
 
痰の吸引については、手技の習得はさほど難しいものではないものの、嫌がる父に対して無理やりに吸引しないといけないということへの精神的な負担が大きかった。これは家族がやることのデメリットの一つだと思う。でも、吸引しないと場合によっては死に至る危険性もあるので、やらなくてはいけない。いや、そもそも、「やらなくてはいけない」かどうかも疑う余地はあるけれども。。。そこの疑問についてはまた今度、ゆっくり書くとして、とにかく、毎回「ごめんね」「嫌だよね」「しんどいよね」と謝りながら、痰を吸引しなければならない。できればやりたくないことの1つが痰の吸引だった。おそらく在宅介護で痰の吸引をされている家族の方は、みなさん多かれ少なかれ、同様のジレンマを抱えているのではないかと思う。
 
精神的な負担はあるものの、一応痰の吸引もできるようになったので、これでまた退院に向けての準備を一つクリアすることとなる。