認知症の父の在宅介護記録

アルツハイマー型認知症(要介護5)を患う父の在宅介護の記録

誤嚥性肺炎(嚥下訓練)

認知症になってからの父は最初に数(時間や金額)が分からなくなり、だんだん分からない状態への不安から苛々することが増えてきた。そして次第に物の名前も出ずらくなり、言いたいこともうまく伝えることができなくなってきた。プライドの高い父は、うまく話せない自分への自己嫌悪とともに、そんな自分のことを他人は馬鹿にしているのではないかとの被害妄想をも抱くようになり、常に不機嫌もしくは無感情というような状態になってきた。
 
こうした状況ゆえ、自発的なコミュニケーションの機会は減り、だんだん言葉数が少なくなり、こちらの問いかけにへの反応も薄くなってきた。最終的にはYes / Noの質問に対しても、首を振るなどの反応もない。唯一の反応は痛い時、苦しい時、不安な時などに目で訴えることくらい。
 
さらに、食事についても、うまく咀嚼できず、むせることが増え、1年足らずの間に、きざみ食→とろみ食→ペースト食と食事形態もいっきに変化していった。また口腔内の衛生状態が悪かったのか、歯がどんどん抜けていったことも、咀嚼力が弱くなった一因かもしれない。
 
そんなこんなで、「話す力」「食べる力」の両方を失った父は、入院当初は経口摂取は不可能と診られていたが、入院中の言語聴覚士の先生による地道な嚥下訓練のおかげで、なんとペースト食を食べられるまで復活したのだ!
 
嚥下訓練といっても、意思疎通ができない父は、指示されたことを行うということができない。そのため言語聴覚士の先生主導で以下のような訓練が毎日行われていた。
 
1.口の周りのマッサージ
2.首や顔を動かす訓練
この2つによって、咀嚼や嚥下に必要な筋肉に刺激を与えることで、拘縮を防ぐことができるのだそう。
 
3.氷水による刺激
冷たい刺激によって嚥下反射を惹起することができるらしい。
 
4.飲み込む演習
ゼリー→とろみのついた飲物→ペースト食というふうに口に入れるものの形状も変わっていった。
 

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これはアイソトニックゼリーという嚥下が困難な方向けの水分補給ゼリーを使って

飲み込む訓練を行っているところ。

 

そして言語聴覚士の先生から教えてもらった嚥下訓練を行う上で大切なこと。
 
1.とろみはマスト
普通のさらっとした水の場合、口に含んで、ごくんとして、食道に行くまでの時間はあっという間。嚥下機能が低下している方の場合、嚥下機能が働く前に水が流れてしまい、誤嚥につながりやすいので、必ずとろみをつけること。
 
2.のませる量はきもち多め
誤嚥することを恐れるばっかりに、口に含ませる量を少量に抑えてしまいそうだが口に入る量が少なすぎると、「食べ物・飲み物が来た」という指令がでずらく、嚥下機能が惹起されない。なので、与える量としてはテーブルスプーン1杯程度がベター。逆に量が多すぎると、飲み込み漏れが出て、喉にたまり、これまた誤嚥につながる可能性があるので、これまた要注意。
  
やはり、繰り返しの訓練にまさるものは無いのだな。当初はもう経口摂取は不可と思われていた父も、病院のペースト食を完食するまで回復したのだから、 日々の積み重ねって本当に大切だと実感する。そして、やはり人間(動物)は口から食物を摂取するものなのだと再認識する。QOLという観点からも、経口摂取を可能にすることの意味はとても大きいと思う。
 
あと、こうした嚥下訓練は全て自宅でもできること。私たちはこうしたリハビリの様子も写真や動画で記録しながら、分からないことがあれば質問し、ノートもとっていった。医師や看護師との会話も含め、会話の内容を一言一句覚えることはできない。なので、こうした医療従事者からの説明や助言等はきちんと記録として残しておいた方が良い。在宅介護をする/しないに関わらず。