誤嚥性肺炎(治療)
入院期間中、肺炎と膿胸の治療を行うこととなった。
●肺炎治療
入院してから肺炎治療のために抗生剤の点滴を行っていたものの、 1週間弱でまた高熱が出て、肺炎をぶりかえしてしまった。 誤嚥性肺炎の場合、 いくら抗生剤で肺の炎症を抑えられたとしても、 その間も唾液や痰の誤嚥の可能性がある。誤嚥した場合、 唾液や痰が肺にいくことで、また肺に炎症が起こってしまう。 こうしたことはよくあることのようだ。そんなこんなで、 治療もまたゼロからの仕切り直しとなった。
ここで問題なのは、栄養状態。 点滴は最低限の栄養しか摂取できないため、 肺炎の治療をしきりなおすにあたって、 点滴だけでは体がもたないようだ。より高い栄養をとるためには、 前述の経管栄養(鼻からチューブor胃ろう) という選択肢を考えざるをえなくなった。
看取り専門の病院であれば、もう大がかりな治療はせず、命を終えるまで待つという選択肢もありうる。けれども、父が入院 した病院は急性期病院( 急性疾患または重症患者の治療を24時 間体制で行なう病院)のため、治療することが第一の目的。 そのため治療を遂行するためには、 その治療に耐えうる栄養状態を維持する必要がある。
そこで、 私たちは治療という観点から栄養摂取が必要だと判断した医師に従 うことにした。その結果、鼻からチューブを入れ、 栄養を直接に胃に注入することとなった。 チューブで栄養を入れることで、 月単位で寿命が延びる可能性があるとのことだったが、 この時は延命云々という観点ではなく、 まず今患っている肺炎を完治するために必要なことはすべきだとい うことで、鼻からのチューブに同意したのだ。
入院当初は酸素の値もひくく、最初の1週間は酸素マスクが不可欠な状態であったものの、次第に呼吸も安定し、マスク→チューブとなり、最終的には酸素がなくても自力で十分呼吸ができるようになった。時々、38度を超える発熱があったりしたものの(熱が出ている時は誤嚥をしている可能性大だそう)、看護師による痰の頻回吸引のおかげか、発熱が長く続くことはなく、平熱→時々発熱→平熱の繰り返しだった。
●膿胸治療
父は肺の炎症と膿胸(肺の周りに膿が溜まる状態)とがあった。入院当初より肺炎の治療としては抗生剤の投与とさらなる誤嚥を防ぐための痰の頻回吸引が行われていた。膿胸についてはかなりの量の膿が溜まっているようで治療する必要があるものの、 父の体力等を考えると、ドレナージという胸膜腔にチューブを挿入し膿を出す治療の負担やリスクもあり、医師も膿胸治療をするか否か悩んでいるということだった。治療をするか否かは父の状況をみつつ、最終判断は医師に任せることにした。
結果、ドレナージを実施し、数週間かけて2リットル近い膿を排出した。2リットルもの水分が貯まっていたなんて、想像するだけでも、苦しくなる。。。
これが膿を排出するマシーン。少しずつ圧をかけて吸引していく。
でも、膿をきちんと排出できたこともあってか、この治療の目途がたった後は、退院も現実味をおびてきた。
肺炎と膿胸をきちんと治療できたこと、経鼻栄養を通し体力がついてきたことによって、言語聴覚師による嚥下訓練のリハビリも効果が出てくるようになる。入院当初は間近に迫りつつある死を意識せざるをない毎日だったのが、嘘のようだった。現代の医療と24時間体制でケアしてくださる看護師の存在の賜物だ。そんなこんなで2ヶ月に及ぶ治療を無事終えることとなる。