認知症の父の在宅介護記録

アルツハイマー型認知症(要介護5)を患う父の在宅介護の記録

朝日新聞:終末期患者が蘇生拒否、半数超の消防本部で対応に苦慮

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この記事の内容、他人事ではない。

 

我が家でも、この件については何度か話をしてきたものの、いざ何か起こった時には、気が動転して救急車を呼びかねないなと思う。

 

父が退院してから呼吸困難になったことが2回あった。

1回目は昼食におかゆを食べさせ誤嚥した時。

2回目は早朝、痰の吸引をしている時。

 

1回目は食べ物の誤嚥をはじめて目の当たりにし、一体なにが起こったのか分からず、母、姉、私でパニックになった。私が吸引し、姉が訪問看護師に電話をかけ指示を仰いだ。そしてすぐに看護師が自宅にかけつけてくれ、体位ドレナージを行ってもらい、症状は安定した。

 

2回目は早朝、私1人で痰の吸引をしていた時。前回誤嚥した時と同じような気管から鳴り響く音を聞き、何が起こっているのかが分かった。うろたえつつも、訪問看護師に電話をかけた。「このままだと死んでしまう」と思った私の手は震えていて、うまくダイアルできなかった。電話で指示された通りに体位を変換し、何とか落ち着いた。それでも、酸素の値がドンドン下がり、60を切ったときは、「もうダメだ」と思い、泣きそうになった。

 

私たちは家族で、父の状態が急変した際にどのように対応すべきか話し合いをしてきた。私たちの間では、たとえ父の病状が急変したとしても蘇生はしない、という方向でコンセンサスが得られている。その時は一時的に苦しいかもしれない。でも蘇生をして苦しさを長引かせたくないという思いからだ。

 

それでも、いざ、気管からものすごい音がなり響き、今にも息が止まりそうになっている父の姿を目にすると、とっさに「このまま死なせてはいけない」「なんとかしなければ」と思うものだ。訪問看護師に電話をし、病院に搬送するように言われたら、私たちも救急車を呼んでしまうのではないだろうか。

 

医師や看護師は状況を冷静に客観視し、あきらめることもできるだろうし、またあきらめなければならない時もあるだろう。でも家族は医療のプロではない。目の前にいる人間に対して愛情とともに、「少しでも長く一緒にいたい」という思いを持って接している。そう簡単に割り切れない。

 

これこそが、在宅療養や在宅介護の難しい点だと思う。今、在宅療養や在宅介護を増やしていこうという流れになりつつある中、こうした看護や介護にあたる家族への指導や働きかけがより一層必要になっていくのではないかと思う。